生物学的製剤とは
生物学的製剤は、免疫や炎症に関わる特定の分子や細胞の働きを標的とする薬です。関節リウマチだけでなく、SLE、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、血管炎など、さまざまなリウマチ・膠原病で使用されています。
同じ生物学的製剤でも、使用する病気、作用する場所、投与方法、注意する点は異なります。当院では、病気の状態やこれまでの治療、合併症などを考えて薬を選択します。
治療を始める前と治療中の感染症確認
生物学的製剤では、感染症への注意が必要です。治療を始める前に、結核やB型肝炎などの感染症について必要な確認を行います。
治療中は、発熱だけでなく、新しく出た咳・痰、息苦しさ、排尿時の痛み、皮膚の赤み・腫れ・化膿など、普段と違う症状がある場合にはご相談ください。
次の注射や点滴の予定がある時に、明らかな感染症や強い体調不良がある場合は、そのまま投与する前にご確認ください。
主な薬剤群と、特に異なる確認ポイント
TNF阻害薬:関節リウマチや乾癬性関節炎・脊椎関節炎などで使用します。心臓や神経の病気など、これまでにかかった病気によって薬の選び方が変わることがあります。
IL-6阻害薬:関節リウマチなどで使用します。IL-6阻害薬を使用している場合は、熱やCRPだけで感染症の有無を判断せず、咳、息苦しさ、腹痛、皮膚の異常など、普段と違う症状にも注意します。強い腹痛が続く場合には早めにご相談ください。
アバタセプト:関節リウマチなどで使用する治療薬の一つです。患者さんの年齢、合併症、これまで使用した薬などを考えて選択します。
IL-17経路を標的とする薬:乾癬性関節炎や脊椎関節炎などで使用します。口腔内などのカンジダ感染や、炎症性腸疾患との関係にも注意して使用します。長引く下痢、血便、強い腹痛など、これまでになかった消化器症状がある場合にはご相談ください。
SLEで使用する生物学的製剤
SLEでは、アニフロルマブ(サフネロー)、ベリムマブ(ベンリスタ)などの生物学的製剤を使用します。当院でもこれらの薬を使用しています。
皮下注製剤では、患者さんの状態に応じて自己注射を行うこともできます。
サフネローでは、片側の体に痛みが出て、その部分に発疹や水ぶくれが出る場合などは、帯状疱疹の可能性があるため早めにご相談ください。
ベンリスタでは、気分の強い落ち込みなど、普段と明らかに異なる精神面の変化がある場合にもご相談ください。
血管炎・EGPA・IgG4関連疾患など
リツキシマブ(リツキサン/バイオシミラーあり)は、ANCA関連血管炎などで使用される生物学的製剤です。当院ではリツキシマブの院内点滴は行っていません。治療が必要と判断した場合には、投与可能な医療機関へ依頼し、連携して治療します。
EGPAでは、メポリズマブ(ヌーカラ)、ベンラリズマブ(ファセンラ)などが治療選択肢になります。これらは皮下注射で、条件を満たせば自己注射で治療することもできます。
IgG4関連疾患では、イネビリズマブ(ユプリズナ)などの治療薬があります。当院ではユプリズナの院内投与は行っていません。この治療が必要な場合には、投与可能な医療機関へ依頼します。
バイオシミラーについて
バイオシミラー(バイオ後続品)は、先行するバイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性が確認されたうえで承認される医薬品です。
当院では、バイオシミラーが利用できる生物学的製剤については、原則としてバイオシミラーを使用しています。ただし、病気の適応、製剤、患者さんの状況などによって先行品を使用する場合もあります。
自己注射について
生物学的製剤には、自宅で自己注射できる薬があります。当院では、自己注射を行う場合には必要な説明と練習を行い、安全に使用できることを確認してから導入します。
妊娠・出産・授乳
生物学的製剤の中には、妊娠中にも使用できる薬があります。妊娠を希望する場合には、病気を安定させながら妊娠・出産に適した治療を一緒に検討します。薬剤ごとの扱いは「妊娠・出産・授乳を考えている方へ」で説明します。
医学確認・参考文献
- 執筆・医学的確認
- 前島圭佑
- 最終医学確認日
このページの情報は一般的な説明であり、個々の患者さんの診断・治療を示すものではありません。薬の使い方は、ご自身に説明された内容と処方内容に従ってください。