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リウマチ性多発筋痛症の治療は変わりつつあります―ステロイドの減量と診断・治療の見直し

PMRのステロイド減量や治療の見直し、PMRと高齢発症関節リウマチ(LORA)の区別を説明する図。医師と相談する患者の場面も含む。

リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、主に50歳以上の方にみられ、肩や股関節の周囲に痛みや強いこわばりが現れる病気です。

「PMRの治療といえばステロイド薬」という印象を持つ方も多いと思います。確かに、プレドニゾロンなどのステロイド薬は現在でもPMR治療の基本です。よく効くことも多い一方、減量すると症状が戻ったり、長期間の服用が必要になったりすることもあります。

近年は、ステロイドで症状を抑えることだけでなく、診断や病状を継続して評価し、必要に応じて治療を見直すことが重視されています。2026年には英国リウマチ学会(BSR)の新しいPMR治療指針が公表され、欧州リウマチ学会(EULAR)の2025年版勧告も2026年に論文として公表されました。これらは、ステロイドの減量だけでなく、患者さんの状態に応じてステロイド以外の治療を検討する考え方も示しています。ただし、海外で推奨される治療と、日本で承認されている治療は必ずしも同じではありません。

ステロイドが効いても、治療が長引くことがあります

PMRではステロイド治療を開始すると、肩や腰まわりの痛み、朝のこわばりが比較的速やかに軽くなることがあります。しかし、減量中に病気が再燃する患者さんもいます。

ステロイド薬は大切な薬ですが、使用量や服用期間に応じて、骨粗鬆症、糖尿病、感染症などの副作用への注意が必要です。骨折予防などの対策は、治療を始める段階から検討します。そのため、症状と検査結果、副作用や併存する病気を確認しながら、できるだけ少ない量で病状を安定させ、可能なら中止を目指します。

もちろん、長く服用していることだけで治療が不適切とはいえません。再燃を繰り返すために慎重な減量が必要な場合もあります。

痛みが残ることと、炎症が続いていることは同じではありません

PMRの患者さんに肩や腰の痛みが残っていても、原因がすべてPMRの炎症とは限りません。加齢に伴う肩の腱の病気、変形性関節症、背骨の病気などが重なる場合もあります。ステロイドの減量に伴う体調の変化が関係することもあります。

痛みがあるからステロイドを増やす、という判断がいつも正しいわけではありません。一方、血液検査の炎症反応が低いからといって、再燃を必ず否定できるわけでもありません。

大切なのは、症状の現れ方、診察所見、CRPなどの検査、これまでの治療経過を合わせて考えることです。

PMRと高齢発症関節リウマチ(LORA)は区別が難しいこともあります

PMRに似た症状を起こす病気の中でも、注意したいのが高齢発症関節リウマチ(LORA)です。

関節リウマチというと手指の関節が腫れるイメージがあるかもしれません。しかし、高齢になってから発症する関節リウマチでは、肩などの大きな関節の症状が目立ち、PMRに似た始まり方をすることがあります。

リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陰性でも、関節リウマチを完全には否定できません。また、どちらもステロイドで症状が軽くなることがあるため、薬の効き方だけで区別することもできません。

その後の診察で手首や手指の関節の腫れがはっきりしてきたり、症状の経過から関節リウマチと判断されたりする場合があります。初診時に区別しきれなかった病気の特徴が、時間とともに明らかになることもあるのです。

PMRと関節リウマチでは長期的な治療の考え方が異なります。ステロイドがなかなか減らせない場合などには、当初の診断を改めて検討することも重要です。

ステロイド以外の治療も進歩しています

PMRの再燃を繰り返す患者さんや、ステロイドの副作用が問題になる患者さんに対して、ステロイドの使用量を減らすことを目的とした治療が研究されています。

例えば、メトトレキサート(MTX)や、炎症に関わるIL-6という物質の働きを抑えるIL-6受容体阻害薬について、海外で研究が進んでいます。MTXはステロイドの減量を助ける目的で検討されてきましたが、効果の大きさには不確実な点もあります。一方、IL-6受容体阻害薬のサリルマブやトシリズマブでは、一部の臨床試験でステロイドの使用量を減らし、寛解につながる結果が報告されています。2026年の英国リウマチ学会の診療指針でも、病状やステロイドの副作用のリスクに応じて、こうした薬の使用が検討されています。

ただし、これらの治療がすべてのPMR患者さんに必要なわけではありません。MTXでは血球減少、肝機能障害、感染症などに、IL-6受容体阻害薬では重い感染症などに注意が必要です。IL-6受容体阻害薬では、発熱やCRPの上昇が目立たなくなる場合もあります。2026年10月時点で、ここで紹介したMTXやIL-6受容体阻害薬は、日本ではPMRそのものを対象とした承認適応がありません。実際の診療では、患者さんの状況に応じて使用を検討する場合もありますが、保険診療上の扱いも含めて個別の判断が必要です。海外の研究成果を、そのまま国内で一般的に行われる治療と考えないよう注意が必要です。

新しい薬を希望することよりも、まずは現在の診断と病状、ステロイドによる利益と負担を丁寧に評価することが大切です。

治療が長引いたときに確認したいこと

PMRと診断されて長く治療を受けている場合には、次の点を主治医と確認してみましょう。

  • 現在もPMRの炎症が続いているのか
  • 痛みの原因として別の病気が関係していないか
  • 高齢発症関節リウマチなど、診断を見直す必要がないか
  • ステロイドの減量計画と、骨粗鬆症などの副作用対策は適切か

PMR治療の基本がステロイドであることは変わっていません。しかし、必要な治療を続けながら、病気の評価を繰り返し、できるだけ安全にステロイドを減らすという考え方は、以前より重要になっています。

ステロイドを服用中の方は、自己判断で減量・中止しないでください。新たに強い頭痛が出た、物をかむと顎が痛む、見え方に異常が現れたなどの場合は、PMRに合併することがある巨細胞性動脈炎の可能性も考え、その日のうちに医療機関へ相談・受診してください。急な視力低下や見えなくなった場合は、夜間や休日でも直ちに救急医療機関を受診してください。

詳しい病気の説明は、当院の「リウマチ性多発筋痛症(PMR)」のページもご参照ください。

参考文献

1. Toyoda T, et al. The 2026 British Society for Rheumatology guideline for the treatment of polymyalgia rheumatica. Rheumatology (Oxford). 2026. doi:10.1093/rheumatology/keag502. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42869454/

2. Mukhtyar CB, et al. 2025 EULAR recommendations for the management of polymyalgia rheumatica and primary large vessel vasculitis. Ann Rheum Dis. 2026. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42481270/

3. Hysa E, et al. Elderly-onset rheumatoid arthritis versus polymyalgia rheumatica: A systematic review and meta-analysis on pathophysiology, diagnosis and clinical progression. Autoimmun Rev. 2026. doi:10.1016/j.autrev.2026.104196. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42858918/

4. PMDA 添付文書(国内適応確認) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/3999444G1022_1?user=1 / https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/3999016M1021_3?user=1

執筆:
前島圭佑
最終確認:

本ページは一般的な医学情報です。個別の診療については主治医にご相談ください。

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