まず、「機能性障害」とは
このページでは、体の「働き・調整」の問題を考えるために、「機能性障害」という言葉を使います。
体の症状を考えるときには、臓器や組織の「形・構造」に変化があるかという視点と、体の「働き方・調整のしかた」に問題があるかという視点があります。
前者は、いわゆる「器質的な異常」を見る考え方です。
一方、体の形や構造だけでは症状を十分に説明しにくいときに、神経やホルモンなどによる体の働きや調整にも目を向けて考えるのが、「機能」という視点です。
本書やこのページでは、この「働き・調整」の問題を理解するための説明上の言葉として、「機能性障害」という表現を使っています。
検査だけでは説明しきれない症状を考える
体調が悪くて検査を受けても、痛みやだるさなどの症状を十分に説明できる異常が見つからないことがあります。
だからといって、その症状が「気のせい」というわけではありません。
自律神経、ホルモンなどが、その時々の状況に合わせて、
- 心拍や血圧
- 胃腸の動き
- 体温
- 痛みの感じ方
など、体のさまざまな働きを絶えず調整しています。
こうした「体の働きを調整する仕組み」がうまく働かなくなると、検査では症状を十分に説明できる異常が見つからなくても、つらい症状が続くことがあります。
このような「働き・調整」の問題をイメージしやすくするために、院長は著書の中で「体の制御システムのバグ」という表現を用いています。
「バグ」とは、どんなイメージでしょうか
たとえばパソコンは、部品そのものが壊れていなくても、ソフトウェアがうまく働かないと、動作がおかしくなることがあります。
体も少し似ています。
検査で確認できる臓器や組織の「形」だけではなく、それらを動かし、調整している仕組みがうまく働いているか、という視点があります。
この「働き・調整」の問題をイメージしやすくした言葉が、ここでいう「バグ」です。
もちろん、体はパソコンよりはるかに複雑です。「バグ」は医学的な診断名ではなく、体の状態を理解するためのたとえです。
「異常なし」=「何も起きていない」ではありません
検査で大きな異常が見つからないと、
「何も悪くないのに、なぜこんなにつらいのだろう」
と感じることがあります。
しかし、検査は体のすべての働きを測っているわけではありません。
痛み、だるさ、めまい、動悸、胃腸の不調などは、体の働きや調整の変化によって生じることがあります。
大切なのは、
「検査に出ないから気のせい」
と考えないことです。
一方で、
「検査で異常がないから機能性障害」
と決めつけることもできません。
まず、症状の原因となる病気がないかを適切に評価することが前提です。
病気がある人にも重なることがあります
機能性の症状は、ほかの病気がない人だけに起こるものではありません。
すでに病気がある方でも、病気そのものによる症状に加えて、体の働きや調整に関わる症状が重なることがあります。
そのため、症状をすべて一つの病気だけで説明しようとせず、「体の形」と「体の働き」の両方から考えることが役立つ場合があります。
少し詳しく知りたい方へ
本書でいう「機能性障害」と医学で使われる言葉
本書でいう「機能性障害」は、医学の世界で一つの決まった診断名として使われている言葉ではありません。本書では、検査で確認できる体の「形」だけでは症状の全体を十分に説明しにくいときに、体の働きや調整のしかたにも目を向けて考えるための、説明上の言葉として使っています。
医学では、これと重なる考え方の一つとして、「機能性身体症候群(FSS:Functional Somatic Syndromes)」という概念が使われてきました。FSSは一つの病気の名前ではありません。過敏性腸症候群、線維筋痛症、機能性ディスペプシア、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)などが、これまでFSSの文献で例として扱われてきました。これらはそれぞれ別の病気・症候群であり、「同じ一つの原因で起こる病気」という意味ではありません。症状の現れ方や、複数の症候群が重なってみられることを、診療科の枠を越えて考えるために使われてきた概念です。
一方、WHOの国際疾病分類ICD-11には、「身体的苦痛症(Bodily distress disorder)」という別の診断概念があります。これはFSSの別名でも、本書でいう「機能性障害」の別名でもありません。身体的苦痛症では、つらい身体症状が続き、その症状への強い注意や心配が続いて、日常生活への影響が大きくなっていることなどを含めて診断します。
大切なのは、身体的苦痛症は「検査で原因が見つからないからつける診断」ではないという点です。身体の病気が症状の原因になっている場合でもこの診断が併存することがありますし、反対に、検査で大きな異常が見つからないという理由だけで診断されるわけでもありません。
整理すると、FSSは複数の病気・症候群を横断的に捉えるために使われてきた概念、身体的苦痛症はICD-11に定められた診断概念、本書でいう「機能性障害」は、症状を体の働きや調整という視点から理解するための説明上の言葉です。重なる部分はありますが、同じものではありません。
もちろん、どの言葉を使う場合でも、つらい症状が「気のせい」という意味ではありません。まず必要な医学的評価を行い、そのうえで症状や生活への影響に応じて考えていくことが前提です。
症状を理解するための、もう一つの見方
機能性障害という考え方は、
「原因が分からないから仕方がない」
という話ではありません。
また、
「気持ちの問題だから我慢する」
という話でもありません。
体に目立った「故障」が見つからない時にも、体を動かし、調整している仕組みの側から症状を考えてみる。
それが、このページで伝えたい、「機能性障害」を体の制御システムの「バグ」というイメージで考える見方です。
このページの位置づけ
このページは「体内イメージ」の患者向け説明コンテンツです。当院が「機能性障害」の専門外来を設けていることを示すものではありません。
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体内イメージについて
このページで使っている比喩は、体の仕組みを理解しやすくするために院長が著書でも用いているイメージ表現です。実際の体の仕組みはより複雑で、診断名や治療法を示すものではありません。
- 執筆:
- 前島圭佑
- 最終確認:
本ページは一般的な医学情報です。個別の診療については主治医にご相談ください。
治療中の薬は自己判断で中止・減量・変更しないでください。
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