関節リウマチの治療を続けて、関節の腫れや血液検査の炎症反応が以前より落ち着いてきた。それなのに、痛みや体のつらさがなかなか改善しない。
「薬が効いていないのだろうか」「検査がよいのに痛いのはなぜだろう」と不安に思う方もいらっしゃると思います。
関節リウマチでは、関節の炎症を抑えることが治療の基本です。ただし、痛みには炎症以外の仕組みも関係します。今回は、近年注目されている「痛覚変調性疼痛」という考え方を紹介します。
痛みと炎症は、いつも同じではありません
関節リウマチでは、関節を包む滑膜に炎症が起きることで、腫れや痛みが生じます。炎症が続くと関節の損傷につながるため、抗リウマチ薬によって病気の活動性を十分に抑えることが重要です。
しかし、治療によって炎症が落ち着いても、痛みが残る場合があります。これまでに生じた関節の変化、変形性関節症、腱など関節周囲の問題、神経の病気などが関係することもあります。
さらに、痛みを感じたり調節したりする仕組み自体の変化が、痛みに関わることも分かってきました。
大切なのは、「痛みがある=必ず炎症が強い」とも、「検査値が正常=炎症はない」とも決めつけないことです。新しい関節の腫れや朝のこわばりの悪化などがあれば、病気の活動性を改めて評価する必要があります。
「痛みのブレーキ」が働きにくくなるとは?
私たちの体には、痛みの信号を受け取る仕組みだけでなく、その信号を調節する仕組みも備わっています。
例えば、痛みを感じすぎないように神経系が信号の伝わり方を調節する働きを、分かりやすく「痛みのブレーキ」とイメージすることができます。
この調節が変化して痛みを感じやすくなり、関節などの状態だけでは説明しきれない痛みが続く場合があります。こうした痛みの仕組みを考えるときに用いられる医学用語が「痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)」です。
これは「気のせい」でも「我慢すればよい痛み」でもありません。実際に感じている痛みであり、痛みの感じ方を調節する神経系の働きが関わると考えられます。
また、痛覚変調性疼痛は炎症による痛みと二者択一ではありません。関節リウマチの炎症による痛みと、痛覚変調性疼痛の特徴が同じ患者さんに重なる場合もあります。
著書で説明してきた「機能性障害」とのつながり
私は『リウマチ・膠原病になったら最初に読む本―外来通院学2.0―』(2024年)などの著書で、体の形や構造の変化だけでは説明できない症状を、体の働きや調整という視点から捉える「機能性障害」という考え方を紹介してきました。
痛みの感じ方を調節する仕組みの変化も、その中で説明している大切なテーマです。痛覚変調性疼痛は、こうした説明と重なる部分を持つ医学的な痛みの概念です。
ただし、著書で使う「機能性障害」は体のさまざまな働き・調整を理解するための広い説明上の言葉であり、痛覚変調性疼痛と同じ意味ではありません。また、検査で異常が見つからないだけで、機能性障害や痛覚変調性疼痛と診断できるわけでもありません。
体の「形」だけでなく「働き・調整」にも目を向ける考え方については、当院の「体内イメージ/機能性障害」のページでも説明しています。
2026年の研究で分かったこと
2026年に発表された研究では、診断されたばかりの炎症性関節炎患者66人を約2年間追跡しました。
追跡できた患者さんのうち、2年後にも約半数が一定以上の痛みを訴えていました。また、当初から痛みの中枢性調節に関連する特徴や、疲労・睡眠・心理面を含む症状が目立つ方では、痛みが長引きやすい傾向がみられました。
この研究は、痛みを炎症だけで説明しようとすると、患者さんのつらさを十分に理解できない場合があることを示唆しています。
ただし、関節リウマチだけを対象とした研究ではなく、対象者も少数です。この結果から、残存痛の原因が必ず痛覚変調性疼痛であると判断することはできません。
新しい疼痛管理ガイドラインが重視すること
2026年に英国リウマチ学会から、炎症性関節炎の痛みに関する診療ガイドラインが発表されました。
そこでは、病気の炎症を適切に治療することに加えて、痛みそのものを丁寧に評価し、患者さんの日常生活への影響を確認することが重視されています。
必要に応じて、無理のない身体活動や運動、痛みについての正しい理解、睡眠の改善、生活動作の工夫、心理的な支援などを組み合わせることが勧められています。
心理的な要因にも目を向けるのは、痛みを「気持ちの問題」と片づけるためではありません。痛みと睡眠、疲労、不安などは相互に影響するため、それらを含めて考えることが大切だからです。
一方で、鎮痛薬や神経に作用する薬を漫然と追加すればよいというものでもありません。どの方法が役立つかは、痛みの原因や患者さんの状態に応じて判断する必要があります。
診察で伝えていただきたいこと
痛みが続く場合には、「痛い」ということだけでなく、以前と比べてどう変わったか、関節が腫れているか、朝のこわばりが変化したか、睡眠や日常生活にどのような影響が出ているかを伝えていただくことが役立ちます。
診察や血液検査などから炎症の状態を評価し、必要に応じて関節以外の原因や痛みの感じ方の変化も考えていきます。
新たな強い関節の腫れ、熱感、発熱などがある場合は、感染症なども含めた早めの評価が必要です。
痛みが残っていても、抗リウマチ薬が全く効いていないとは限りません。反対に、検査値がよいからといって、痛みを我慢する必要もありません。
関節リウマチの炎症を適切に抑えることと、患者さんが感じる痛みや生活上の困りごとに向き合うこと。両方を大切にしながら治療を考えていきたいと思います。
関節リウマチの病気そのものや治療については、当院の「関節リウマチ」のページをご覧ください。
参考文献
1. Rutter-Locher Z, et al. Centrally mediated pain features predict persistent pain in early inflammatory arthritis: a 2-year prospective study. Pain. 2026;167:2365–2374. PMID:42708348. DOI:10.1097/j.pain.0000000000004099. PubMed
2. Scott IC, et al. The 2026 British Society for Rheumatology guideline for pain management in people with inflammatory arthritis. Rheumatology (Oxford). 2026;65(7):keag320. PMID:42476581. DOI:10.1093/rheumatology/keag320. PubMed
3. International Association for the Study of Pain (IASP). Terminology: Nociplastic pain. IASP 用語集
4. 前島圭佑. リウマチ・膠原病になったら最初に読む本―外来通院学2.0―. 日本医学出版, 2024. 第23章「機能性障害」を理解する.
5. 前島圭佑. わかっているのに、なぜ体にいいことが続かないのか. かんき出版, 2026. 第2章.