外来診療をより有効に活用するために
「外来通院学」は、病気や薬の知識そのものとは少し違う視点から、外来通院をより有効に活用するための考え方をまとめたものです。
診察前に何を考えておくとよいか、日頃の変化をどう伝えるか、薬を使ってどうだったかをどう共有するか、長い治療経過をどう振り返れるようにするか。そうした、患者さんと医療者が一緒に診療を進めるうえで役立つ工夫を扱います。
外来通院学は治療法ではありません。また、患者さんに新しい義務を増やすためのものでもありません。すべてを上手にできる必要はなく、自分に合いそうな工夫を一つずつ使っていただければ十分です。
外来診療は、患者さんと医療者が一緒につくるものです
診察室で医療者が患者さんを見ることができる時間は、日常生活全体のごく一部です。
そのため、受診と受診の間に何が変わったか、薬を使ってどうだったか、何に困ったか、生活上どのような事情があったか、といった情報も、診療を考えるための大切な材料になります。
患者さんが持っている日常生活の情報と、医療者が診察や検査から得る医学的な情報を持ち寄り、その時々に合った診療を一緒に考えていく。外来通院学が大切にしているのは、そのような考え方です。
日頃の変化は、分かる範囲で残しておくと役立ちます
毎日の体調を細かく記録する必要はありません。ただ、受診と受診の間に大きな変化があったときは、簡単に残しておくと診察で役立つことがあります。
たとえば、症状がいつ頃から変わったか、どこにどのような症状が出たか、薬を使ってどうだったか、受診の間に大きな体調変化や出来事がなかったか、といったことです。
発疹や関節の腫れなど、見た目の変化が受診時には消えていることもあります。必要に応じて無理のない範囲で写真を残しておくと、説明の助けになることがあります。
診察では、まず一番伝えたいことから
診察前に「今日は何を一番相談したいか」を一つ考えておくだけでも、話が整理しやすくなります。
診察のはじめに、前回から「良くなった」「悪くなった」「あまり変わらない」など、全体としてどうだったかを伝え、そのあとに、いつから、どこに、どのような変化があったかを補足すると経過が伝わりやすくなります。
症状の程度を数字で表す方法が役立つこともありますが、正確な点数をつけることが目的ではありません。「前回より半分くらい楽になった」など、自分なりに変化の大きさを表せれば十分です。
うまく説明しなければならない、と身構える必要はありません。分かる範囲から話してください。
薬を使ってどうだったかも、そのまま教えてください
薬を始めた、増やした、減らした、変更した。そのあとに症状がどう変わったか、困った症状がなかったか、続けにくさがなかったかは、次の治療を考えるうえで大切な情報です。
「効かなかったと言いにくい」「副作用のような症状があった」「飲めなかった」「自己判断で減らしてしまった」「続けにくかった」といったことも、隠す必要はありません。
処方どおりにできなかった場合も、そのこと自体を責めるためではなく、なぜ難しかったのかを一緒に考えることが大切です。理由を含めて共有していただくことで、治療内容や続け方を考える材料になります。
なお、薬を中止する・減らす・再開するなどの具体的な判断は、薬や病状によって異なります。自己判断で変更せず、個別の対応は医療者と相談してください。
生活上の事情も、診療の大切な情報です
仕事や学業、子育てや介護、通院にかかる時間、交通手段、治療費などは、治療を続けるうえで大きな事情になることがあります。
医療者からは見えにくいことも多いため、困っていることがあれば遠慮なくお知らせください。すべてを希望どおりにできるとは限りませんが、病状や治療の安全性とのバランスを考えながら、続けやすい方法を一緒に検討します。
治療歴を、あとから振り返れるように
治療が長くなると、いつどの薬を使い、なぜ変更し、そのとき体調がどうだったかを思い出すのが難しくなることがあります。
すべてを細かく書き残す必要はありません。大きな治療変更、主な薬の開始・中止、その理由、効果や気になった症状など、後から振り返ると役立ちそうなことだけを簡単に残しておく方法があります。
お薬手帳や診療情報とあわせて使えば、長い経過を振り返るときや、主治医が変わったとき、他の医療機関へ紹介されるときにも役立つことがあります。
記録が負担になる方は、無理に作る必要はありません。
急に体調を崩したときは、通常の通院とは分けて考えます
急な発熱・咳などがあるとき
発熱や咳などの急な症状が出たとき、薬をどうするかは、使っている薬や病状によって異なります。このページでは「熱が出たらこの薬を止める」といった一律の方法は示しません。
当院通院中の患者さんに発熱・咳などの急な症状がある場合は、来院前にお電話でご相談ください。症状や状況に応じて、当院での受診方法をご案内するか、他の医療機関の受診をお願いする場合があります。
個別の薬剤については、治療薬の案内もあわせてご確認ください。
必要に応じて、ご家族と一緒に考えることもできます
説明を一緒に聞いてほしい、治療や生活上のことを家族と共有したい、という場合には、本人が希望すれば、必要に応じてご家族と一緒に考えることもできます。
一方で、家族の同伴は前提ではありません。患者さんご本人の意思や個人情報、ご自身で説明したいという気持ちを大切にします。
全部を一度に実践する必要はありません
外来通院学は、「この通りにしなければならない」という決まりではありません。
毎日記録することが合う人もいれば、診察前に一番相談したいことだけ考えておく方が合う人もいます。薬を使ってどうだったかを率直に伝えることから始める方もいるでしょう。
大切なのは、患者さんが持っている日常生活の情報と、医療者が持っている医学的な情報を持ち寄り、その時々の診療を一緒に考えることです。
「これなら使えそう」と思う工夫を、一つずつ取り入れてみてください。
外来通院学と書籍について
「外来通院学」という言葉は、院長・前島圭佑が、患者さんが病気や治療と付き合いながら外来診療をより有効に活用するための考え方を整理する中で用いてきた言葉です。
この考え方は、2019年の『リウマチ・膠原病患者さんとそのご家族のための外来通院学』、2024年の『リウマチ・膠原病になったら最初に読む本 ―外来通院学2.0―』でも扱っています。
このページだけでも基本的な考え方が分かるように作成しており、書籍の購入は診療や実践の前提ではありません。
医学確認
- 執筆・医学的確認
- 前島圭佑
- 最終医学確認日
このページの情報は一般的な説明であり、個々の患者さんの診断・治療を示すものではありません。