皮膚や内臓が硬くなる病気と、寒さで指の色が変わる症状
全身性強皮症は、皮膚や内臓が硬くなる「線維化」と、細い血管の血のめぐりが悪くなる「血管障害」を特徴とする膠原病です。多くの方で、寒さで指の色が変わる「レイノー現象」が早い時期からみられます。
レイノー現象は、全身性強皮症以外の膠原病でも、また病気がない方でも起こります。このページでは、全身性強皮症とレイノー現象をあわせてご説明します。
全身性強皮症とは
膠原病の多くは炎症(消えずに続く火事)が症状の中心です。強皮症にも炎症はありますが、それに加えて「硬くなる」「血のめぐりが悪くなる」が前面に出ます。
皮膚が硬くなる範囲によって、大きく2つの型に分けられます。
- 限局皮膚硬化型:皮膚の硬さが主に手指や顔などにとどまる型です。進み方はゆっくりなことが多く、重い内臓の病変は比較的少ないとされますが、肺高血圧症が起こることがあります。
- びまん皮膚硬化型:皮膚の硬さが腕や体幹にも広がる型です。発症から数年のあいだに皮膚や内臓の病変が進みやすいため、早めの評価と治療が大切です。
どの臓器にどの程度の変化が出るかは、一人ひとり大きく異なります。全身性強皮症と診断されても、すべての方に重い内臓の病気が起こるわけではありません。
全身性強皮症は国の指定難病です。病状によっては医療費助成の対象になります(「関連情報」の医療費のページをご覧ください)。
レイノー現象とは
寒さや緊張をきっかけに手足の指の細い血管が強く縮み、指先の色が白→紫→赤と変わる現象です。すべての色の変化がそろうとは限りません。色が変わっている間は、しびれ、冷たさ、痛みを感じることがあります。温まると元に戻ります。
レイノー現象には、原因となる病気がないもの(一次性)と、ほかの病気に伴うもの(二次性)があります。
- 一次性:レイノー現象の多くはこちらです。若い時期に始まり、両手に左右対称に起こり、指先に傷を残さないことが多いのが特徴です。
- 二次性:全身性強皮症、全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病、シェーグレン病などの膠原病のほか、振動する工具を長く使う仕事、一部の薬なども原因になります。
次のような場合は、膠原病に伴うレイノー現象かどうかを確認したほうがよい場合があります。
- 30歳を過ぎてから初めて起こった
- 痛みが強い、または左右差がある
- 指先に小さな傷(潰瘍)や、へこんだ傷あとができる
- 指のむくみ、皮膚のつっぱり、関節の痛み、飲み込みにくさ、息切れなど、ほかの症状がある
- 健診などで抗核抗体が陽性と言われた
日常でできる対策
- 手だけでなく、体全体を冷やさないようにする(手袋・重ね着・首まわりの保温)
- 冷たい水や冷凍食品を扱うときは手袋を使う
- 急な温度変化(夏の冷房の効いた部屋など)に気をつける
- たばこを吸っている方は禁煙する(ニコチンは血管を縮めます)
- 指先の小さな傷を放置せず、清潔に保つ
一部の薬(血圧や心臓の薬の一部、片頭痛の薬の一部など)でレイノー現象が強まることがあります。ただし、自己判断で中止せず、使っている薬を主治医にお伝えください。
主な症状
全身性強皮症の症状は、皮膚・血管・内臓に分けて考えると整理しやすくなります。
皮膚・手指
- 指がむくんで太く見える(早い時期にみられることがあります)
- 指先から皮膚が硬く、つっぱるようになる。進むと手の甲、腕、顔、体幹に広がることがある
- 指が伸ばしにくい、握りにくい
- 指先の小さな傷(潰瘍)、指先のへこんだ傷あと
- 皮膚の色の変化、かゆみ
消化管
- 胸やけ、酸っぱいものが上がってくる(逆流性食道炎)
- 飲み込みにくい、食べ物がつかえる感じ
- おなかの張り、便秘や下痢
肺・心臓
- 動いたときの息切れ、から咳(間質性肺疾患)
- 息切れ、むくみ、疲れやすさ(肺高血圧症)
- 動悸、脈の乱れ
腎臓
- 急に血圧が上がり、腎臓の働きが悪くなることがあります(強皮症腎クリーゼ)。頻度は高くありませんが、早く治療を始める必要がある重要な病状です。
関節・筋肉
- 関節の痛みやこわばり、筋力の低下
すべての方にこれらの症状が起こるわけではありません。
指先の色の変化や傷は、写真を残しておくと診察で役立ちます。撮り方のこつは「診察で伝えたいこと:見た目の変化は、写真に残す」をご覧ください。
すぐ連絡すべき症状
救急受診が必要な症状
ご注意
- 急に起こった、または急に強くなった息苦しさ
- 強い胸の痛み
- 意識が遠のく、気を失う
これらの症状がある場合は、強皮症による症状かどうかを自己判断せず、直ちに救急受診してください。状況によっては119番通報してください。
その日のうちに連絡が必要な症状
- 血圧がいつもより急に、明らかに高くなった(主治医から目安を伝えられている方は、その目安を超えたとき)
- 血圧の上昇とともに、強い頭痛、見え方の異常、尿が急に減る、むくみが急に強くなるなどがある
- 指先が黒っぽく変色して戻らない、指先の傷が急に悪化して強く痛む
診療時間内は当院へお電話ください。診療時間外は「緊急時・診療時間外の受診先について」をご確認ください。
次の受診時に伝えていただきたいこと
- 少しずつ息切れが増えてきた、から咳が続く
- 胸やけや飲み込みにくさが強くなった
- 指先の傷が治りにくい、新しい傷ができた
- 皮膚の硬さが広がってきた
※ここに挙げた症状が軽くても急に悪化している場合は、次の受診を待たずにご相談ください。
診断
全身性強皮症の診断は、皮膚の硬さの範囲(診察)、指先の傷あとなどの所見、肺の画像検査、自己抗体などを組み合わせて判断します。
国内の診断基準では、手指を越えて広がる皮膚の硬さがあるか、または手指に限られた皮膚の硬さに、指先の傷あと・肺の線維化・強皮症に特徴的な自己抗体のいずれかが加わるかどうかをみます。ただし、診断基準を患者さんご自身で当てはめて自己診断することは勧めません。
レイノー現象と指のむくみ、自己抗体の陽性などがあっても、まだ診断基準を満たさない段階の方もいます。その場合は、経過をみながら定期的に確認します。
また、皮膚だけが部分的に硬くなる「限局性強皮症」は、名前が似ていますが全身性強皮症とは別の病気です。
検査
血液検査
- 抗核抗体
- 強皮症に関連する自己抗体(抗トポイソメラーゼI抗体〈抗Scl-70抗体〉、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体など)
自己抗体の種類によって、起こりやすい病変の傾向が異なることが知られています。ただし、抗体だけで病状や今後の経過が決まるわけではありません。
肺・心臓
- 胸部X線、心電図(当院で行います)
- 胸部CT、呼吸機能検査、心臓の超音波検査(心エコー)など(必要に応じて連携先の医療機関で行います)
腎臓
- 血圧、尿検査、腎機能の血液検査
全身性強皮症では、症状がはっきりしないうちに肺や心臓の変化が始まることがあります。診断がついた後も、症状がなくても、肺・心臓・腎臓を定期的に確認することが大切です。
治療
現在のところ、全身性強皮症を一度で治しきる薬はありません。どの臓器にどのような変化があるか、病気が進んでいる時期かどうかに応じて、病変ごとに治療を組み合わせます。
| 病変 | 主な治療の考え方 |
|---|---|
| レイノー現象・指先の傷 | 保温・禁煙などの生活の工夫が基本。必要に応じて血管を広げる薬を使います |
| 皮膚の硬さ(とくに進行が早い時期) | 免疫の働きを抑える薬を検討します |
| 間質性肺疾患 | 免疫の働きを抑える薬や、肺の線維化の進行を抑える薬を検討します |
| 肺高血圧症 | 肺の血管を広げる薬を、組み合わせて使うことがあります |
| 逆流性食道炎 | 胃酸を抑える薬。食後すぐに横にならない、寝る前の食事を控えるなどの工夫 |
| 強皮症腎クリーゼ | 血圧を下げる薬(ACE阻害薬)による速やかな治療。入院での治療が必要です |
| 関節・手指のこわばり | 痛みに応じた治療と、手指の動きを保つための運動・リハビリ |
ステロイド薬は、ほかの膠原病では治療の中心になることが多い薬ですが、全身性強皮症では使い方に注意が必要です。ステロイドが強皮症腎クリーゼのきっかけになりうることが指摘されているため、使う場合は血圧をこまめに確認します。ステロイドを使っている方は、自己判断で中止・減量せず、ご自宅での血圧測定を勧められている場合は記録を続けてください。
薬について詳しくは「治療薬について」をご覧ください。
炎症が落ち着いても残る症状
全身性強皮症では、病気の勢いが落ち着いた後も、硬くなった皮膚、指の曲がりにくさ、レイノー現象などが長く続くことがあります。これらは「治療が効いていない」ことを意味するとは限りません。
また、検査で病気の勢いが落ち着いていても、だるさ、痛み、眠りの浅さなどが続くことがあります。こうした症状には、体の働き・調整の乱れ(「バグ」)が関わることもあります。詳しくは「機能性障害とは」をご覧ください。
通院中に知っておきたいこと
感染症:免疫を抑える薬を使っている方は、熱が出たときの薬の扱いを「治療中の暮らしの注意」の早見表でご確認ください。
骨・血圧・眼など:ステロイドを使っている方は、「ステロイド治療中の体の管理」をご覧ください。ステロイドを3か月以上続ける(予定を含む)方は、骨の評価をおすすめします(「骨粗鬆症」)。
血圧:全身性強皮症、とくにステロイドを使っている方では、血圧の変化が大切な手がかりになります。ご自宅で測った血圧の記録があれば、受診時にお持ちください。
妊娠:妊娠を考えている方は、病状が落ち着いている時期を選ぶことや、使っている薬の確認が大切です。できれば妊娠前から主治医にご相談ください。詳しくは「妊娠・出産・授乳を考えている方へ」と「妊娠・授乳と治療薬」をご覧ください。
費用:全身性強皮症は指定難病で、病状によっては医療費助成の対象になります。詳しくは「医療費・公的支援制度」をご覧ください。
日常生活:手指の保温、禁煙、指先の傷のケア、逆流を防ぐ食べ方の工夫は、治療と並んで大切です。
当院での診療・他の医療機関との連携
当院では、レイノー現象がある方、抗核抗体などの異常を指摘された方、すでに全身性強皮症と診断されている方の診療を行います。病名がまだはっきりしない段階でもご相談いただけます。
病状により総合病院と連携して診療します。
受診を考えてよい場合
レイノー現象がある方
- 寒さで指の色が白や紫に変わることを繰り返し、膠原病が心配
- レイノー現象に加えて、指のむくみ、皮膚のつっぱり、関節の痛み、胸やけ、飲み込みにくさ、息切れなどがある
- 30歳を過ぎてから初めてレイノー現象が出た、痛みが強い、左右差がある
- 指先に小さな傷やへこんだ傷あとができた
- 抗核抗体が陽性と言われ、レイノー現象がある
若い時期からの、両手に同じように起こる軽いレイノー現象で、ほかに症状がない場合は、病気を伴わないことが多いとされています。それでも心配な場合はご相談ください。
全身性強皮症と診断されている方
- 現在の病状や治療、定期的に必要な検査について相談したい
- 総合病院での治療が落ち着き、近くで継続して通院したい
ご予約のうえ受診してください。予約がない場合は、来院前に必ずお電話ください。
関連情報
- 治療について治療の考え方/投与方法/治療中の安全確認
- 治療薬について免疫抑制薬・ステロイド薬など、主な治療薬の役割と安全に続けるための情報です。
- ステロイド治療中の体の管理骨・血圧・血糖・眼などをまとめて確認するためのページです。
- 治療薬の費用の目安リウマチ・膠原病の診療で使われる主な治療薬の、薬剤そのものの費用の目安
- 医療費・公的支援制度指定難病の医療費助成についてご案内します。
- 妊娠・出産・授乳を考えている方へ妊娠前の薬の確認/妊娠が分かったときの早めの相談
- 外来通院学通院をより有効に活用するための考え方です。
- こんな症状・検査異常はご相談くださいご相談いただける例/先に他の診療科での評価をおすすめする場合
参考文献
主な参考文献
- 全身性強皮症診療ガイドライン2025年版(強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン・疾患レジストリに関する研究班 編、金原出版、2025年)
- 難病情報センター:全身性強皮症(指定難病51)
- 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同:膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025
- 2013 classification criteria for systemic sclerosis: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative(Ann Rheum Dis 2013;72:1747–55)
- EULAR recommendations for the treatment of systemic sclerosis: 2023 update(Ann Rheum Dis 2025;84:29–40)
- 執筆:
- 前島圭佑
- 最終確認:
本ページは一般的な医学情報です。個別の診療については主治医にご相談ください。
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