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Dr.前島の膠原病論

『Dr.前島の膠原病論』の表紙に込めた5つの思い

2022年に、医学生・研修医を主な読者として『Dr.前島の膠原病論』(中外医学社)を出版しました。

この本は、いわゆる教科書ではありません。膠原病について覚えるべき知識を並べるだけでなく、専門医がそれらの知識をどのようにつなぎ、どのように考えているのか――その「頭の中」を、できるだけ言葉と図にしてみようとした本です。

内容だけでなく、表紙にもその考え方を込めました。

完成した表紙は、医学書としてはかなり異質で、初めて見た方は少し驚くかもしれません。けれど、その違和感も含めて、私が表紙に込めたかったものです。

今回は、表紙に込めた5つの思いをご紹介します。

『Dr.前島の膠原病論』の表紙。全身の臓器が描かれた人体イラスト
『Dr.前島の膠原病論』(中外医学社、2022年)

1|あえて、医学書らしくしなかった

『Dr.前島の膠原病論』は医学書ですが、一般的な教科書とは少し性格が違います。

膠原病の知識そのものだけでなく、「膠原病をどう考えるか」という私なりの考え方をまとめた本です。タイトルどおり、教科書というより、私なりの「膠原病論」をまとめた本ともいえます。

だからこそ、表紙も典型的な医学書らしいデザインにはせず、少し違和感のあるものにしたいと考えました。

題名の「論」の文字を強調したデザインも、その意図の一つです。

2|「壮大・神秘・難解」を、そのまま絵にしたかった

表紙の中央には、全身の臓器が透けて見える大きな人体を置いています。

膠原病は、初めて学ぶ人にとって「全身に関係していて、壮大で、神秘的で、何となく難しそう」に見えやすい分野です。

その、ぱっと見たときの「とっつきにくさ」を、あえて表紙でも表現したいと思いました。

ただし、この人体にはもう一つ意味があります。

一見すると複雑に見える全身の情報も、見方を変えると整理できる。そのことを、次の色分けで示そうとしました。

3|全身を「浅部」と「深部」に分けてみる

膠原病では、全身のさまざまな臓器に病変が起こります。

本書では、それらを細かく一つずつ覚える前に、臓器を大きく「浅部」と「深部」に分けて考える、という整理の仕方を紹介しています。

体の臓器を、皮膚や関節のような「浅いところ」と、腎臓や心臓・肺のような「深いところ」の2つに分けて考えると、病気の全体像がつかみやすくなります。

表紙の人体も、この「浅部」と「深部」の違いを意識して色分けしました。

もちろん、人体を本当に二色だけで表現したわけではありません。デザインとしての見やすさも考えながら、赤・紫系の部分と、それ以外の部分とで違いが伝わるようにしています。

細部に入り込む前に、まず全体を俯瞰する。

複雑に見えるものを、いったん単純化して大局をつかむ。

表紙の人体には、本書全体を通じて大切にしているその考え方も込めました。

この人体図のもとになった色分けの案は、私が手描きした下絵を出版社へ送り、デザイナーの方に仕上げていただいたものです。

4|「手」を大きく描いた理由

もう一つ、表紙で目立つのが手です。

リウマチ・膠原病の診療では、手の診察から多くの情報を得ることができます。

「手は口ほどにものを言う」と表現したくなるくらい、私にとって手は大切な診察部位です。

そのため、表紙では手を印象に残るように描いてもらいました。

さらに帯では、人体全体ではなく手の部分だけが使われています。これは最初から私が細かく指定したものではありませんでしたが、完成案を見たときには「分かる人には分かる」仕掛けのようで、うれしい誤算でした。

5|怖そうに見えて、実は笑って手招きしている

表紙の人体は、最初に見ると少し怖そうに感じるかもしれません。

でも、よく見てみてください。

実は笑っています。

そして、こちらへ手招きをしています。

この表情と仕草には、私がこの本で最も伝えたかったことの一つを込めています。

初学者にとって、膠原病学は「難しい」「覚えることが多い」「暗記ばかりでつまらない」と見えやすい分野です。

けれど、実際に学び、考え続けていくと、とても奥が深く、面白い領域です。

「そんなに身構えなくて大丈夫です。こちらへどうぞ」

表紙の人体が、そんなふうに「膠原病学にいらっしゃい」と読者を招いているように見えればよいと思いました。

表紙から、膠原病の世界へ

この表紙を考えていた2021年、私は「この表紙に興味を持って本を手に取った若い読者が、いつか膠原病の道に進んでくれたら」と書いていました。

その思いは、今も変わっていません。

『Dr.前島の膠原病論』は、膠原病の知識を網羅する教科書ではなく、専門医がどのように考えているのか、その一例を示した本です。

表紙もまた、その「考え方」を一枚の絵にしたものだと思っています。

もしこの少し変わった表紙が、膠原病という分野に興味を持つ小さなきっかけになれば、著者としてこれほどうれしいことはありません。

書籍情報

『Dr.前島の膠原病論』
前島圭佑 著
中外医学社
2022年1月28日発行
ISBN 978-4-498-02716-9

本書の内容・書誌情報は、中外医学社の公式ページで確認できます。

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