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病気と治療

シェーグレン病の治療はどこまで進んだ?――新しい薬の研究と今後の可能性

「シェーグレン病の治療は どこまで進んだ?」「新しい薬の研究と今後の可能性」という題字と、明るい部屋で水の入ったグラスを持ち穏やかに微笑む女性のイラスト。

シェーグレン病の患者さんから、「この病気を根本的に治す薬はないのでしょうか?」と質問されることがあります。

シェーグレン病は、免疫の異常によって涙や唾液をつくる組織などに炎症が起こる病気です。目や口の乾燥が代表的な症状ですが、疲れやすさ、関節の痛み、場合によっては肺や腎臓などの臓器の障害がみられることもあります。

これまでの治療は、目や口の乾燥を和らげる対症療法が中心でした。全身の臓器に炎症が起きた場合には免疫を抑える治療を行うこともありますが、病気そのものの活動性を広く改善できる治療法は、まだ十分に確立されていません。

しかし、近年、この状況に変化がみられています。

病気の原因に働きかける新しい治療薬

シェーグレン病では、免疫を担う「B細胞」という細胞の異常な働きが、病気の発症や進行に関係していると考えられています。

そこで、B細胞を標的とする新しい薬の開発が進められています。

その一つが「イアナルマブ(ianalumab)」という薬です。B細胞の表面にある「BAFF受容体」という部分に結合し、B細胞を減らすとともに、B細胞を生き延びさせる信号を遮る抗体です。

2026年10月、医学雑誌『New England Journal of Medicine』に、この薬を使った2つの大規模な臨床試験の結果が発表されました。

合計779人の患者さんが参加し、約1年間にわたって薬の効果が調べられました。

その結果、新しい薬を使用した患者さんでは、使用しなかった患者さんと比べて、全身の病気の活動性を表す指標に統計学的に有意な改善が認められました。

シェーグレン病に対して、病気の仕組みに働きかける治療薬の可能性が、大規模な臨床試験で示されたことは重要な進歩です。

ただし、乾燥や疲労が改善したわけではありません

ここは特に注意して理解していただきたい点です。

今回の研究では、全身の病気の活動性には一定の改善が認められましたが、患者さん自身が感じる乾燥や疲労などの症状については、明確な改善効果が示されませんでした。

また、全身の活動性指標の改善幅も大きいものではありませんでした。

つまり、「新しい薬によってシェーグレン病が治ることが証明された」という研究ではありません。

病気の活動性を抑えることと、患者さんが日常生活で感じるつらさを減らすことは、必ずしも一致しないのです。

なお、重い副作用の頻度は、薬を使わなかった患者さんと同程度でした。一方、注射した部位の反応などは、薬を使った患者さんで多くみられました。

ほかにも新しい薬の研究が進んでいます

現在、イアナルマブ以外にも、さまざまな治療薬が研究されています。

例えば、「ダゾダリベプ(dazodalibep)」という薬は、免疫細胞同士の情報伝達を調整する薬です。2026年9月には、第III相臨床試験で全身の病気の活動性を改善したという結果が製薬企業から発表されました。ただし、詳細な結果については今後の検証が必要です。

また、B細胞に関わる別の仕組みを標的とした「テリタシセプト(telitacicept)」は、中国で行われた臨床試験の結果にもとづき、2026年6月に中国でシェーグレン病の治療薬として承認されました。日本では使用できず、米国などで臨床試験が続いています。

このように、現在は一つの薬だけではなく、複数の異なる治療方法が研究される段階に入っています。

新しい薬は、いつから使えるのでしょうか?

現時点では、これらの新しい薬が日本でシェーグレン病の治療薬として一般的に使用できる状況にはありません。

臨床試験で効果が認められても、安全性や長期的な効果をさらに確認し、国内での承認などの手続きを経る必要があります。

また、シェーグレン病は患者さんによって症状や病気の活動性が大きく異なります。新しい薬が実用化されても、すべての患者さんに必要になるとは限りません。

今できる治療も大切です

新しい薬への期待が高まる一方で、現在行っている治療の重要性が変わるわけではありません。

目や口の乾燥に対する適切な治療、虫歯や眼の障害の予防、必要に応じた全身の病状の確認などは、今後も大切です。

シェーグレン病の治療研究は、確実に新しい段階へ進みつつあります。

まだ解決されていない課題は多くありますが、これまで対症療法が中心だった病気に対して、病気の仕組みに働きかける治療が研究されていることは、患者さんにとっても希望につながる進歩だと思います。

今後も、新しい治療研究の進展をお伝えしていきたいと思います。

参考文献

1. Mariette X, et al. Ianalumab for the Treatment of Patients with Sjögren’s Disease. N Engl J Med. 2026 Oct 21. DOI: 10.1056/NEJMoa2601088.

2. Price EJ, et al. British Society for Rheumatology guideline on management of adult and juvenile onset Sjögren disease. Rheumatology (Oxford). 2025;64(2):409–439. DOI: 10.1093/rheumatology/keae152.

3. アムジェンの発表:ダゾダリベプ第III相試験(OASIZ 301)の速報(英語、2026年9月22日)

4. Vor Bio/RemeGenの発表:テリタシセプトの中国での承認(英語、2026年6月8日)

執筆:
前島圭佑
最終確認:

本ページは一般的な医学情報です。個別の診療については主治医にご相談ください。

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