大分市で、リウマチ・膠原病を中心に、内科の慢性疾患を診療しています。

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体の中をイメージして、いつもの食事を選び直す。

健診で「LDLコレステロールが高いですね」「中性脂肪が高めです」と言われたとき、まず「脂っこいものを食べ過ぎたかな」と思うかもしれません。

でも、話はそれほど単純ではありません。脂質は私たちが生きるために必要なもので、食べ物から取り込むだけでなく、体の中でも作られています。しかも、甘い飲み物や糖質の摂り過ぎも、肝臓での中性脂肪づくりに関係します。

大切なのは、脂質をすべて「悪いもの」として遠ざけることではありません。体内で作られ、運ばれ、使われる流れをイメージして、どこに食事が関わっているのかを知ることです。

LDLコレステロールと中性脂肪では、見直したい食べ方も少し違います。

1 脂質は、体の中で働く大切な材料です

まず、肝臓を、脂質を作ったり調整したりする「工場」だと考えてみてください。私たちの体は、食事から脂質を取り入れるだけでなく、肝臓などでも脂質を作っています。食べた脂質は主に小腸から吸収されます。

コレステロールは細胞の膜や一部のホルモン、胆汁酸の材料になります。一方、中性脂肪は体を動かすエネルギーとして使われ、余った分は蓄えられます。どちらも体に必要なものです。

脂質は、血液中をそのまま流れるのではなく、小さな「運び役」に入って移動します。LDLはその運び役の一つです。検査項目の「LDLコレステロール(LDL-C)」は、LDLという運び役に含まれるコレステロールが、血液中にどれだけあるかを示しています。

つまり、「食べた油がそのまま血管に浮いている」という話ではありません。

図をクリックまたはタップすると、拡大表示できます。キーボードでは、Tabキーで図を選び、Enterキーで開けます。

小腸から吸収された脂質と肝臓で作られた脂質が、血液中の運び役に乗って全身へ運ばれ、材料やエネルギーとして使われる流れを示す模式図。

小腸・肝臓・血液・全身をめぐる脂質の流れを表した模式図です。

すべての経路や働きを表すものではありません。

脂質異常症は、食べた脂だけで決まるわけではありません。体質、肝臓の働き、体重、運動習慣なども関係します。

2 LDLコレステロールと中性脂肪は、同じ「脂質」でも役割が違います

LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、LDLの粒子が血管の壁に入り込み、動脈硬化に関わる変化が少しずつ進むことがあります。脂っこいものを一度食べた途端に血管が詰まるわけではありません。

血管の壁にたまったLDLが「サビ」のように変化し、小さな炎症(ボヤ)が長く続くことで、動脈硬化が進むと考えられています(体内イメージ「酸化・糖化」「慢性炎症」)。

一方、中性脂肪は体の「燃料」です。食べ物の脂質だけでなく、糖質やエネルギーを摂り過ぎると、肝臓で中性脂肪が作られやすくなります。飲酒や内臓脂肪の増加も関係します。

糖質の摂り過ぎは、特に中性脂肪の上昇やHDLコレステロールの低下に関係します。一方、LDLコレステロールの値には、飽和脂肪酸や食事性コレステロールの摂取、体質、ほかの病気や薬など、さまざまな要因が関わっています。そのため、糖質を控えるだけでLDLコレステロールが必ず下がるわけではありません。

しかし、LDLコレステロールが高い方でも、糖質の摂り過ぎを見直すことは大切です。中性脂肪やHDLコレステロールも含め、血液中の脂質全体の状態を整えるためには、脂肪の摂り方だけでなく、糖質の摂り方にも目を向ける必要があります。

「どちらが高いのか」によって、食事で意識したいことが変わります。食生活だけの問題と決めつける必要もありません。

LDLコレステロールが高い場合と中性脂肪が高い場合で、控えめにする食品と選び直す食品の例を左右に比較した図。

LDL-Cと中性脂肪では、食事で意識したい点が異なります。

LDL-CとTGの両方が高い場合もあります。医師の指示に従い、食事全体を見直しましょう。

脂質異常症の診断基準

日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』の脂質異常症診断基準(単位:mg/dL)

項目基準
LDLコレステロール140以上:高LDLコレステロール血症
120〜139:境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40未満:低HDLコレステロール血症
トリグリセライド(中性脂肪)150以上(空腹時採血)、175以上(随時採血):高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール170以上:高non-HDLコレステロール血症
150〜169:境界域高non-HDLコレステロール血症

「空腹時」は、基本的に10時間以上何も食べていない状態です(水やお茶などは可)。境界域の値の場合は、ほかに動脈硬化の危険が高い状態がないかを確認し、治療の必要性を考えます。

3 LDLが高い方は、油をなくすより「種類を選び直す」

「糖質に気をつければ、LDLコレステロールも大丈夫」とは限りません。一方で「コレステロールが高いから油を全部やめよう」と考える必要もありません。油には種類があり、LDLコレステロールへの影響が異なるからです。

ここで注目したいのは「飽和脂肪酸」です。肉の脂身、バター、生クリーム、脂肪分の多い乳製品、それらを多く使った食品などに含まれます。飽和脂肪酸を多くとる食生活は、肝臓でのLDLの取り込みなどに影響し、LDLコレステロールを高くする方向に働きます。LDLコレステロールが高い方では、レバーなどの内臓肉や魚卵など、コレステロールを多く含む食品を一度にたくさん食べたり、頻繁に食べたりする習慣にも注意が必要です。

反対に、飽和脂肪酸の一部を、魚や植物油などに含まれる不飽和脂肪酸へ置き換えることは、LDLの管理に役立ちます。

例えば、いつも脂身の多い肉料理を選ぶなら、魚や豆腐を主菜にする日を増やしてみる。バターをたっぷり使う習慣があれば、使う量を減らしたり、別の油に少量置き換えたりしてみる。

「新しい健康食品を足す」よりも、「いつもの一品を選び直す」ことから始めましょう。

ただし、オリーブオイルなどの植物油もエネルギーを含みます。良いとされる油を今の食事にどんどん追加すればよいわけではありません。大切なのは、質と量の両方です。

4 食物繊維は、腸と肝臓の脂質の流れに関わります

食物繊維は、腸の中でさまざまな働きをしています。とくに水溶性食物繊維は、LDLコレステロールの管理にも役立ちます。

少しだけ体の中を想像してみてください。

肝臓は、コレステロールを材料に「胆汁酸」という物質を作っています。胆汁酸は腸で脂肪の消化・吸収を助け、その大部分は再び肝臓へ戻って再利用されます。

ところが、水溶性食物繊維の中には、腸で胆汁酸が再び吸収されるのを妨げ、便と一緒に体の外へ出る量を増やすものがあります。

すると肝臓は、失われた胆汁酸を補うために、コレステロールを材料として新しい胆汁酸を作ろうとします。

その結果、肝臓が血液中のLDLを取り込む働きが高まり、LDLコレステロールを下げる方向に働くことがあります。これは、水溶性食物繊維による作用の一つと考えられています。

つまり、食物繊維が血管の中のコレステロールを直接取り除くわけではありません。腸と肝臓の間で繰り返されている「再利用の流れ」に働きかけるのです。

ただし、これは一部の水溶性食物繊維にみられる働きであり、すべての食物繊維が同じように作用するわけではありません。

麦ご飯、オートミール、豆類、野菜、海藻、きのこなど、いつもの食卓に取り入れやすいものから考えてみましょう。例えば白米の一部を麦に替える、外食で野菜や海藻の小鉢を加える、といった小さな工夫でもかまいません。

特定の一品に頼るのではなく、日々の食卓全体で考えましょう。

腸内細菌と食物繊維のイメージは、体内イメージ「腸管バリアと短鎖脂肪酸」でも紹介しています。

5 中性脂肪が高い方は、「油を食べていないから大丈夫」とは限りません

中性脂肪が高いと聞くと、油や肉の脂身を控えればよいと思うかもしれません。でも、甘い缶コーヒーや清涼飲料水、菓子パンなどをよく摂る方は、糖質も見直しのポイントです。

糖質や食事からのエネルギーを摂り過ぎる状態が続くと、肝臓で中性脂肪が作られやすくなり、血液中へ運ばれることがあります。アルコールも脂質の代謝に影響します。

だからといって、ご飯や果物を全部やめる必要はありません。甘い飲み物を水や無糖のお茶に替える、飲酒の量や回数を減らす、大盛りの回数を少なくする。まずは一つの習慣を選び直してみましょう。

甘い飲み物が体の中でどう働くかは、体内イメージ「酸化と糖化とは?」でも紹介しています。

なお、中性脂肪が著しく高い場合には、急性膵炎などのリスクがあります。この場合は糖質の摂り過ぎを避けるだけでなく、飲酒を控え、食事中の脂質そのものを大きく制限する必要があることもあります。通常の食事の工夫だけで対応せず、早めに医師へ相談し、個別の指示を優先してください。

6 食卓全体を「少しずつ整える」という考え方

「コレステロールに悪い食品」「中性脂肪に悪い食品」という一覧表を作ると、食べてはいけないものばかり増えてしまいます。

そこで、一つの食品の善悪よりも、食卓全体を見渡してみましょう。

魚、大豆・大豆製品、野菜、海藻、きのこ、麦などの未精製穀類を取り入れ、肉の脂身やバター、糖分の多い飲み物などを必要以上にとらず、塩分も控えめにする。こうした食べ方は、日本動脈硬化学会の「The Japan Diet」の考え方とも重なります。

もちろん、毎食和食にする必要はありません。洋食や外食でも、食材の組み合わせを工夫できます。

高齢の方や食が細い方、病気によって栄養制限が必要な方に、一律の減量や厳しい食事制限を勧めるものではありません。生活状況や体調に合わせて考えましょう。

7 コンビニや外食でも、体の中を思い浮かべて選べます

毎日料理をするのが難しくても、選択肢はあります。

場面1|朝のコンビニ

甘い缶コーヒーと菓子パンが毎日の定番なら、まず飲み物だけを無糖にしてみる。中性脂肪が気になる方にとって、取り組みやすい変更です。

場面2|昼の定食

脂身の多い肉料理が続くなら、週に何度か焼き魚や豆腐を使った主菜に替えてみる。LDLコレステロールを意識した選び直しです。

場面3|夜の外食

大盛りや追加の一品が習慣になっているなら、量を少し調整する。飲酒が多ければ、飲まない日を設けることも選択肢です。

一回の食事を「正解」「失敗」と判定する必要はありません。体内の仕組みを思い浮かべながら、次の一食で選び直せれば十分に前進です。

朝のコンビニ、昼の定食、夜の外食の三つの場面で、飲み物や料理の組み合わせ、食べる量を見直す例を示した図。

朝・昼・夜の場面別に、無理なく続けられる選び直しを示しています。

8 次の一週間、ひとつだけ変えてみませんか

今日からすべてを変えようとすると、食事が負担になってしまいます。

それよりも「これならできそう」と思うことを、一週間だけ試してみましょう。

  • 甘い飲み物を飲む機会のうち一回を、水や無糖のお茶に替える
  • 脂身の多い肉料理を、今週一回だけ魚や豆腐料理に替える
  • ご飯の一部を麦ご飯に替える、または野菜・海藻の小鉢を加える
  • お酒の量や飲む回数を今より少なくする
  • 大盛りや追加注文をする回数を少し減らす

うまく続かなければ、方法を変えてかまいません。

大切なのは「全部守れたか」ではなく、自分の生活に合った選び方を見つけることです。

次に血液検査を受けるとき、数値だけでなく、生活の中で何を変えられたかを振り返ってみてください。

続けやすくする工夫は、体内イメージ「体にいいことが続かないのはなぜ?」でも紹介しています。

9 食事療法と薬物療法は、別々の役割を持っています

食事を見直すことは、脂質異常症の管理だけでなく、心血管の健康を考えるうえでも大切です。

ただし、食事だけで十分に数値が下がるとは限りません。体質、動脈硬化性疾患の既往、腎臓病、糖尿病、家族性高コレステロール血症などによって、薬物療法の必要性や管理目標は異なります。

すでに薬を服用している方は、食事を改善したことや検査値がよくなったことだけを理由に、自己判断で薬を中止しないでください。

リウマチ・膠原病の方は血管の病気に注意が必要で、治療薬の中にはコレステロールを上げやすいものもあります。治療中は定期的に確認しています。

脂質異常症の診療や当院への受診については、「高血圧症・脂質異常症などの内科診療」をご覧ください。

よくある質問

Q.卵は食べてはいけませんか?

A.卵は良質なたんぱく質などを含む、栄養価の高い食品です。コレステロールが高いからといって、すべての方が卵を避ける必要はありません。

ただし、卵黄に含まれるコレステロールは一部が腸から吸収され、血液中のLDLコレステロールが上がる方もいます。その影響には個人差があります。

LDLコレステロールが高い方では、卵だけに注目するのではなく、肉の脂身やバターなどに含まれる飽和脂肪酸も含め、食事全体のバランスと食べる量・頻度を考えることが大切です。

Q.オリーブオイルなら、たくさん使ってもよいですか?

A.植物油への置き換えは有用ですが、油の種類だけでなく量も大切です。今の食事に大量に足すのではなく、ほかの油脂と「置き換える」ことを考えましょう。

Q.果物と果汁100%ジュースは同じですか?

A.果物を丸ごと適量食べることと、ジュースを何杯も飲むことは同じではありません。飲み物から糖分を多くとる習慣がないかを見直しましょう。

Q.食事を変えれば薬はやめられますか?

A.必要な薬は、LDLや中性脂肪の値だけでなく、ほかの病気や動脈硬化性疾患のリスクも踏まえて判断します。自己判断で中断せず、主治医と相談してください。

参考文献

主な参考文献

  • 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
執筆:
前島圭佑
最終確認:

本ページは一般的な医学情報です。個別の診療については主治医にご相談ください。

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